ロックンロールで一夜漬け

ロックンロールで一夜漬け

音楽に踏み込む探検日記

「As You Were」と「Who Built The Moon?」

 

こんばんは。

クリスマスからの年の瀬への、世の中の切り替えの早さが結構好きです。

今年最後の更新になります。今年もまた色々な音楽に触れてきましたが、やはり個人的にはオアシスが一番のブームでした。
映画スーパーソニックが公開されたり、ノエル・リアムそれぞれのソロ作品がリリースされたりと、ちょうど関連するイベントが多かったのもあり、ハマるにはよいタイミングだったように思います。
僕のような20代前半の若輩にとってロックンロールはどうしても後追いになることが多いので、こういった過去の良きバンドが改めて取り上げられる風潮は非常にありがたいことです。

ということで今回は、まとめとしてオアシスのギャラガー兄弟の今年発表されたソロ作品を比較してみようと思います。
ここにも各々について雑感を書きましたが、これはどちらも本当に良いアルバムで、両方買って聴き込んでいます。この2枚に限って言えば、昔同じバンドだったとは思えないほど方向性の異なるものになっていますね。

先に発売されたのはリアムの「As You Were?」でした。これはもうロックンロールど真ん中といっていいようなアルバムで、でっかい音のギターにドラム、ベースにボーカルがドーン!!と。ロックンロールが好きでこの兄弟を追いかけている身からすると、まさに「これだよ!」と言いたくなるような曲ばかりでした。アコースティックギターが主体の落ち着いた曲もあり、メロディの良さがやはり際立っているように思います。
そして何よりやはり、リアムの声ですね。オアシス初期に並ぶくらいの力強さと安定感が戻ってきており、それでいてベテランのロックボーカリスト特有の渋い枯れた声色も聴くことができ、流石としか言いようがないです。
またオアシス的な曲も多く、For What It’s Worthなどはライブでもオアシス時代を思わせるようなシンガロングが巻き起こっているようです。それだけオアシスファンからしても違和感なく受け入れられるアルバムだということでしょう。
曲作りに関しても、まず何より歌を軸にして、そこにベース、ドラム、ギターで肉付けをしていっているような印象です。その点もまたオアシスらしい所でもあります。

そして、曲の作り方という点で非常に対照的なのがノエル兄貴の「Who Built The Moon?」ということになるでしょう。
今回大きくアプローチを変えてきており、このアルバムでは歌もあくまで曲を彩る楽器のひとつ、オルガンやシンセと同じところに置いてる感じです。
これも過去記事で詳しく書きましたが、こちらは全体として4つ打ちダンスナンバーの踊れる曲が多いのが特色です。そこにシンセが入って宇宙的、神秘的といいますか、そういった音像になっています。一曲目のFort Knoxなどは本当に今までのノエル・ギャラガーとは一線を画すようです。
しかしながら曲は多幸感に満ちたナンバーが多く、明るく開放的な印象です。
それもあってか、間違いなく実験作であるのに聴きやすく、どんな気分でも聴けるようなアルバムだと思います。また歌が一歩引いた立場になったとはいえ織り込まれているメロディそのものはとても心地よいもので、そこはやっぱりノエルだなあというところでもあります。


はい。
ここからは以上を踏まえて、二作品を並べて考えてみましょう。

まず2つを聴き比べて、個人的に一番に感じるのは、曲の中での歌の立ち位置がすごく違うなという点です。リアムはとにかく歌を聴かせるぜ、という感じで、それに対してノエルはメロディと言葉は主役でなく、あくまで曲の世界観を型作る一要素にとどめているといいますか…。
この違いは、やはりリアムは元々根っからのボーカリストであり、ノエルはギタリストでソングライターだったという事から来ているのかなと思います。ほんとうに最初は歌わないミュージシャンだったノエルだからこそ、歌を一歩後ろに置くという選択ができたと。もしかしたらそういう面もあるのかも知れません。

また、歌詞に関しても今回かなり違いがはっきり出たように思います。
ノエルが宇宙、愛、生命といった大きなテーマで、また時に解釈が難しいような抽象的な表現を取るのに対して、リアムはあくまでシンプルに人間関係、「俺とお前」の話をテーマにしている印象です。For Worth It’s Worthで許しを求めたり、You Better Runで突き放したり、そういう人との関わりを歌っているようです。

聴く人に「俺はこうだ、そんでお前はどうなんだよ?」と直に訴えかけるのがリアムで、曲を通して視界をパッと広げたような壮大な世界を見せるのがノエルと。
ちょっと乱暴ですが、そういう言い方もできるかもしれません。
そのどちらもオアシスの曲に垣間見ることができるもので、なるほど2人が分かれて曲を作るとこうなるのかという感じです。


それで結局、「どっちが良かった??」という事なのですが・・・。

どっちも良かった!というのは前提として。

 

今作に限って言えば、両アルバムをどんな人達が買って聴くかと言えば、そりゃあオアシスファンなわけでして。
つまり歌があってギターがあって…という形が好きな人達なわけですよね。
その点から言っても、得意分野、自分の土俵で勝負しているリアムと、異種格闘戦に挑戦したノエルでは、そりゃあリアムの方が受け入れられやすいとは思います。
だからセールスで見るとAs You Wereの方が優勢なのは、ある意味当然でもある。の、でしょう。
ノエル自身もこの「Who Built The Moon?」に関しては賞賛と批判の両方が来るだろうと言っているくらいですので、本来勝負として考える事自体あまり意味がないでしょう。

というのは身も蓋もないでしょうか…。

個人的には、何となくちょっとモヤモヤしている時や酔っ払ってる時は「As You Were?」が凄くいいですね。
そんで、穏やかな気分の天気のいい昼下がりなんかには「Who Built The Moon?」がいいです。そういう感じですね。

どっち聴こうかな〜って悩み方はしない二択です。

また、ひとつ確かなこととして、両作ともにそれぞれ兄弟の今後に向けた大きな足掛かりになるであろうことは間違いないでしょう。

リアムは自分の力で最高のロックンロールができることを証明し、ノエルは既存の殻を破り新しい境地を切り拓いてみせた。
それだけでも、凄く価値のある作品です。

どちらもファーストアルバムのような新鮮さと将来性を持ったものだと思います。

来年ノエルは日本にくるようですし、リアムは新曲の製作に入るなんて話もありますし、ますます楽しみです。

 

 

今回はここまでです。
今年もお付き合いくださり、ありがとうございました。

また来年も、たまに覗いていただけると幸いです。良いお年を。

ノエル・ギャラガー「Who Built The Moon ?」雑感

こんばんは。寒いですね。

皮ジャン着てたら風邪をひきました。

今回は、ギャラガー続きということでノエル・ギャラガーの新作アルバム「Who Built The Moon?」について書いていきたいと思います。

本作は、ノエルのソロキャリアで三作目の作品になります。三作目にして方向性を大転換したアルバムということで、発売前から話題になっていました。

じゃあ、何がどう変わったのかというと



こうだったのが


 

こうです。

 

 

いや、どうした。

元々ノエルが昔からずっとやってきたのは、ギターとメロディありきの音楽でした。
アコースティックギターでの弾き語りをバンドサウンドで肉付けしていくようなもので、いわゆる「歌もの」ですね。
古き良きロックンロールに基づいた轟音ギター、シンプルなようで少し変わったコード感、そしてそれに乗っかるメロディの美しさ。それがノエルの音楽の大きな魅力のひとつだったように思います。
それが今回は、ロックンロールどころかギターミュージックとも距離を取り、4つ打ちのダンスビートにシンセサイザーを多用した音作りの曲が中心になっています。
またタイトルからも分かる通り宇宙、愛、生命、そういった壮大なテーマが基になっているようです。
その点で、労働者階級の苦しみや野心が滲み出ていた初期オアシスとは音も思想も全く別物だと思われます。
強いてオアシス時代の曲で例えるならshampagne supernovaに近い雰囲気かもしれません。スケールの大きさはそのまま、さらに新しい領域に手を伸ばしたような印象といいますか・・・。
いずれにしろ「ギターを持って歌を作れば無敵のミュージシャンが、それらを封印して全く新しいアルバムを作った」と。それだけでも、十二分に聴いてみる価値のあるアルバムだと思います。

曲ごとに、大まかに見ていきましょう。

 

1. Fort Knox

一曲目から宇宙に吹っ飛ばされます。
頭から「今回は今までと違うぜ!」と宣言されているような印象です。
最初に公開されたのがこのトラックで、驚いたのを覚えています。
何重にも重ねた音色に、荘厳な女性コーラスが入り、そこに呪文のようなノエルの声が加わってくる…と、のっけから明らかに異色です。
どこかエキゾチックといいますか、東洋の匂いがする曲ですね。MVも曼荼羅のようです。
「目を醒ませ」という漢字が唐突に入ってくるあたり面白いです。
目覚ましの音が入るのはビートルズのA Day In The Lifeにもあった手法です。まさに「目を覚ませ」ということでしょうか。

最初聴いた時「まどマギかな・・・?」「ブレードランナーかな・・・?」と思ったのは内緒です。

 

2.Holy Mountain

リード曲です。1曲目の厳かな雰囲気から一転して、明るいダンスナンバーです。
ギターに管楽器を重ねたような分厚いリフが印象的です。
ずーっと四分で飛び跳ねてられるような感じで、これもやはり今までのノエルにはなかったパターンですね。
ただ、ダンスナンバーではありながら、挟み込まれる歌のメロディがとても良いあたりはやはりノエルです。
踊ろうぜ〜というシンプルな歌詞、コーラスで入ってくるリコーダー、後ろで小気味よく叩かれるオルガンそして手拍子と、非常に明るく楽しい雰囲気です。
ノエル曰く、マンチェスターでテロがあったように苦しいことが多い時代だからこそ、明るい喜びの曲が必要なんだ、と。かっけぇ。

 

3.Keep on Reaching

これもやはりリフが印象的ですね。低音域の、オルガンか何かでしょうか?
同じく4つ打ちではありますが、こっちはより叩きつけるような感じのビートですね。それもあってか、よりシリアスな曲調になっています。ノエルの歌もすごくいいですね。1つの曲の中でも抑揚があり、それが曲全体のダイナミズムにもつながっている印象です。

ホーンやコーラスの入り方など、アクション映画の危険なシーンなんかのBGMにも似合いそうな曲ですね。
なんとなく今回、全体的に映画音楽みたいな感じがします。

 

4.It's a Beautiful World

これはまたかなりダンスミュージック寄りですね。ずっと同じリズムの中、ほぼ展開らしい展開なく、歌とシンセが浮遊しているような曲です。分厚いベース、ドラムの上をキラキラした音が飛び回っていて、宇宙の中にいるような不思議な感覚ですね。
女性ボーカルのフランス語でのモノローグがなんとも意味深です。

ライブ動画がありました。
ほぼこのままのアレンジで演奏してるようですね。ツアーでもそうなるのでしょうか。
こうして見ると、バンドでやってても違和感ない音作りですね。

 

5.She Taught Me How to Fly

前曲に続いて始まるような感じで、やはり宇宙的なエフェクトの音の中をボーカルが泳ぐような曲です。
ただこちらの方はややギターロック寄りで、ストロークスのようなリフが聴かれます。
そのぶんバンドサウンド寄りといいますか、ライブ映えしそうな曲です。

これも演奏動画ありますね。よい。

少し話は逸れますが、今回からいつものGibson ES-355でなくジャズマスターを手に取っているのは、また何か心境の変化なのでしょうか?
オルタナ界隈で愛用されるギターであるので、ノエルが手に取るのはある意味自然ではあります。


6.Be Careful What You Wish For

これCome Togetherじゃね・・・?と思ったら、YouTubeのコメント欄にもCome Togetherってめっちゃ書いてありました。
ベースのリフ、全体のリズムなんかは非常にビートルズのCome Togetherに似ています。
ただ肝心のメロディは全然違うので別物ですね。
また東洋風な女性ボーカルのコーラスや、掛け合いで入ってくる「ヒュッ」みたいな声などもあいまって、なんとも呪術的です。
不安定な感じの音程で細い音のギターソロがなんともいい味出してますね。

なんかやっぱり、どうしてもまどマギの魔女の空間のようなイメージが・・・。


7.Black & White Sunshine

レコードではB面一曲目にあたります。
これはまた今作の中でもかなりギターミュージック寄りで、今までのノエルの流れを汲んだ曲のように思います。音作りはかなりシンプルですね。
こう突飛な音の多い曲ばかりだと、ギターのアルペジオが出てくると妙な安心感がありますね。メロディもとても綺麗です。


8.Interlude (Wednesday Part 1)

2つ目のインストになります。同じインストのFort Knoxと比べると、こちらはアコースティックギターアルペジオに奥行きのあるシンセサウンドが段々と重なってくるような展開で、なんとも妖しい雰囲気を醸し出しています。

 

9.If Love Is the Law

個人的に一番好きなのがこの曲です。
鈴の音と鐘の音にクリーンなギターのバッキングが響く、明るい雰囲気の曲です。讃美歌や祝福といった言葉が合うようなイメージですね。平たくいうとクリスマスソングっぽいというか…。
間奏の盛り上がるところでハーモニカが飛び込んでくるあたり、何とも素朴でいいです。

 

10.The Man Who Built the Moon

前曲から一転して、ふたたび荘厳かつシリアスな曲調になりますね。
Do You Know What I Mean?に近いような、でもずっと多くの種類の音が使われ、より色彩豊かな仕上がりになっています。
タイトルがThe Man Who Built the Moonということで、アルバムタイトル(「月を作ったのは誰だ?」)の回答にあたる曲なのかと思います…が、歌詞の大半は言葉遊びのような抽象的なものです。唯一このThe Man Who Built the Moonが登場する一節があり、おおよそ以下のような感じのようです。

「月を作った男の泊まる部屋を用意しろ」
「彼は疲れ切った馬に乗ってやってきた」
「彼がいなくなった街では、何の音も聞こえない。誰一人、一言も喋らない」
「俺は信じてるんだ、彼は言いたいことを好き放題言う奴で、漆黒と石で造られた心を持っていたんだって」

うーん、なんのこっちゃ・・・。
何か特定のもののメタファーなのか、それとも意味なんてないのか、難しいところです。


11.End Credits(Wednesday Part 2)

8曲目のインストのリプライズですね。
少し重なってくる音が増えていますが、気をつけて聴いていれば分かるくらいの違いのような気もします。
クレジットということで、映画でいうエンドロールが流れる所のBGMのような立ち位置の曲なのでしょうか。


はい。

全体を通してみると、やはり今までのノエルの作品とは大きく異なるアルバムであるように思います。
ギターと歌が主役から一歩下がった立ち位置になり、シンセやベースやパーカッションなど全ての楽器のトータルで1つの世界観が作り上げられているような印象です。
しかし織り込まれているメロディの良さ、そして各所にみられるビートルズへのオマージュなどには、やっぱりノエルらしさがあります。
正直もっとプログレ寄りな難解なものが来るんじゃないかと予想していたんですが、良い意味でずっとポップで聴きやすかったです。
どんな気分の時でも聴けそうな一枚です。

ただ、やはりノエル・ギャラガーの作品であるがゆえに、どうしてもついつい曲の中に「オアシスらしさ」を探しながら聴いてしまうのも事実であって・・・。うむむ、という感じです。

また気になるのはライブで、今までとかなり毛色が違う曲が揃っただけに、セットリストがどうなるのか予想がつきません。
ハイ・フライング・バーズの既存曲や、そしてオアシス時代の曲をどう上手く織り込んでいくのか、あるいはこのWho Built The Moon?に統一した曲目になっていくのか・・・。


兄貴によると日本にも来てくれるそうなので、頑張ってチケット取りたいと思います。

 

 

 

The Birthday TOUR2017 NOMADに行ってきた

 

こんばんは。
11月ももう終わりですね。高尾山の紅葉がきれいでした。

 

つい昨日、The BirthdayNOMADツアーファイナルに行ってきました。Zepp Divercityの2デイズ公演で、その2日目の方でした。
今月ずっと楽しみにしていたのですが、想像を上回るやべえライブで終始鳥肌立ちっぱなしでした。
という事で、いつも通り感想いってみたいと思います。

今回ライブ翌日のテンションで書いているので若干とっ散らかりがちですが、よろしければお付き合い下さい。


まずそもそもこのThe Birthdayはどんなバンドかと言えば、かのTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのフロントマン・チバユウスケとドラマーのクハラカズユキが現在組んでいるバンドです。今年で結成12年ということで、そろそろミッシェルよりバースデイ時代の方が長くなるようですね。ミッシェル時代の曲は全く演奏されませんし、全くの別バンドと見るべきものでしょう。
一般的に、以前ひと時代を築いたバンドのフロントマンが新しく組んだバンドというのは、どうしてもフロントマンのソロのようになりがちなイメージがあります。しかしこのバンドに関してははほんと、全員がスターみたいなバンドだなと思います。チバユウスケという圧倒的に強いフロントマンが居ながら、バックのフジイケンジ、ヒライハルキ、クハラカズユキの三人も全く力負けしてない。
一人一人が、この人しか出せないって感じの音を出しているのが凄いです。
敢えて言うなら、本物観たことないですがレッド・ツェッペリンみたいな感じというか・・・。

実際ライブで聴いてみると、何よりまず音圧がヤバいですね。耳にというよりも全身に叩き込まれるような勢いで、頭が割れそうな程なんだけど聴き入ってしまいます。

チバのギンギンに歪んだ声ももちろん、高音で暴れ回るギターも超低いところで唸るようなベースも、そしてドラムの力強さもあってのこの音なのでしょう。
また、ただ爆音なだけでなく、各楽器の音がしっかり聴こえるけども全体の音圧は凄まじいっていう絶妙なところをキープしており、さすが熟練のバンドだなと思います。

各楽器ごとで見ていきましょう。まずギターは、パンクど真ん中な感じのヘヴィなギターリフからディレイを使った飛び道具的な音の置き方まで、本当に多芸な印象です。
ジャジーな感じの落ち着いたフレーズで曲に華を添えたかと思ったら、次の曲では一転してリフとパワーコードでゴリ押すようなギターになったりと。その変化がスリリングです。

ベースはめっちゃ重低音で迫力ある音ですね。ベースって低音楽器とはいってもそこそこ高いところも出るので、バンドによっては中〜低音くらいのところで単音ギターの代わりみたいな役割をしていたりすることもあると思います。しかしこのベースはもうまさしく重低音で、生で聴くと腹の底に響くようなタイプです。
高音域にギター二本がいて、中音域をチバのぶっとい声が支配していると考えるとそうなるのも必然なのかもしれません。
ミュートの効いた刻みでしっかりリズムを支えつつも、実はかなり複雑なフレーズを弾き倒しているのも格好いいところです。
たしかベーシストだけ30代でひと世代くらい下の若い人だったと思うんですが、他メンバーにも全く負けてないですね。それで一言も喋らないで黙々と仕事しているあたり渋いです。

ドラムは手数やバカテクで攻めるタイプというよりは曲ごとの強弱がすごくしっかりしていて、抑え気味でじっくり聴かせるところから一気にグァッと盛り上げていくとかそういう部分がめっちゃ上手いと思います。それこそ指揮者というイメージでしょうか。
MCも適度にゆるくて、他の人があまり喋らないぶんいいバランスになっていましたね。
タカラ焼酎の話とか、その辺の飲み屋にいるおじさんみたいな・・・。

ボーカルは、分かってましたけどやはり生で聴くと鳥肌もんです。どっから絞り出してるんだってくらいの嗄れ声ですね。楽器なしでボーカルだけのパートでも凄いビリビリくるし。
あとチバさんの歌詞が僕は凄く好きで、一見すると関係ないような単語を散りばめて歌の中でひとつの情景を作り上げていくような手法が独特だなーと思います。抽象的な景色や場面をバラバラに写していくという点では、詩というより映画を基にした表現技法なのかもしれません。それがまあ、あの声と爆音によく合うんですよね。
随所で織り込まれるギターとハーモニカもめっちゃ格好いいっすね。荒々しいようでリズムが非常に安定してて、ボーカルパートの演奏する楽器としてとても美味しいです。
あとやっぱフロントマンらしいところとして、演奏中の手を上げたり首振ったりの細かい所作やMCのささいなひと言がいちいち格好いいのは、もうカリスマっつーかずるいとしか言いようがないです。

はい。

セットリストは以下の通りでした。

NOMAD以外からはベスト盤のGOLD TRASHからの選曲が多かったように思います。最新作とベスト盤を押さえていればしっかり楽しめる構成になってるのはありがたいことですね。
また、白状しますと知らない曲もいくつかあったのですが、それでも歌詞もメロディもばっちり耳に入ってきてくれるあたりは流石です。
やはりNOMADのメインだった「夢とバッハとカフェインと」や「抱きしめたい」あたりが今回のキモだったとは思うんですが、他の曲もライブだとまた一味違う良さがありますね。
特に今回ワンマンで聴き通して思ったんですが、このバンドは踊れるナンバーが強いですね。最新作でいうと特にGHOST MONKEYなんかがそうですが、リズム体とボーカルでグイグイ引っ張っていく様は圧巻です。最新作はミドルテンポの曲が多くてどっしり聴かせる感じの曲が多かった印象だったのですが、ライブだとさらに化けるなぁと改めて感じました。
また、知ってる曲についても原曲ではなかった所にタメがあったり、間奏がよりジャムっぽく暴れ回る感じになっていたりと、ライブらしい演出が沢山あり聴きごたえがありました。

そして何だかんだ言ってもアンコールで涙がこぼれそうが聴けたのは嬉しかったですね。サビで合唱するのはライブ映像で観て知ってましたが、実際その場に居るとまた感無量です。
アンコール2回目のラスト曲、缶酎ハイ片手に演奏されたローリンではコールandレスポンスもあり、煽りも十二分で思いっ切り叫べました。

チバさんのMC書き出します。

「大事な日曜日だからここに来てんだろ!」
「ありがとなー」
「(オーディエンスの叫び声に)…カッ!!」
「(アンコールで酒飲みながら)ガソリンなんだよぉ。」
「きょうはダイバーシティで、お前らと一緒だぜ!!」

2時間あって、ほとんどこれだけです。
かっけえ。

The Birthdayのワンマンは今回初でしたが、本当に楽しかったです。幸いツアーはしょっちゅうやってくれてるようなので、また行きたいものです。

また年明けにライブ盤が出るそうなので、そちらも楽しみです。今回のも収録されるといいな。

 

リアム・ギャラガー「As You Were」雑感

 

こんばんは。
小春日和って感じでよき日頃ですね。

今回はオアシスの元ボーカリストリアム・ギャラガーのソロ1stアルバムにあたるAs You Wereについて書いていきたいと思います。今年9月に発売されたばかりで、全英アルバムチャートで1位を獲得したヒット作です。

オアシスの解散から8年経ち、さらにリアム自身が一度音楽界から離れた後の初アルバムリリースということでしたが、やはり変わらず根強い人気がありますね。
えてして元売れっ子バンドのミュージシャンのソロデビューというのは、予想外に上手くいかないこともある印象です。しかしことリアム・ギャラガーに関しては、そんなことはなかったようです。
何より、アルバムの出来自体がすごくいいです。オアシスの過去キャリアを抜きにしても評価されて然りの作品だと思います。

ド真ん中のロックンロール・アルバムということで、やはり僕はアナログ盤で買って聴きました。最近はアナログ盤でもダウンロードコードがついていてiTunesにも入れられます。べんり。
今作はオアシスでもビーディ・アイでもない、リアム・ギャラガーのソロ名義ということで、おそらく全キャリア通しての過去作品の中でも一番リアムが作詞作曲に関わったアルバムと思われます。オアシス時代はほとんど曲を自作せず、ノエルが作った曲を歌うのが主な役割であったリアムだけに、ソングライティングという面は今作の見どころのひとつです。
具体的にどの曲のどの部分を作ったのかというのはインタビューなどを読んだ限りでははっきりしませんでしたが、どうやら部分部分を共作したものもあれば、メロディも歌詞も全部リアム自身が手掛けたものもあるようです。
また、オアシス後期において声がガラガラに劣化していると批判されていただけに、今回ボーカルがどうなったのかも大きなポイントでした。

一ヶ月かけて聴き込んだ感想としては、どっちも最高でした。リアムすげぇ。

収録曲は以下のようになっています。
1. Wall Of Glass
2. Bold
3. Greedy Soul
4. Paper Crown
5. For What It’s Worth
6. When I’m In Need
7. You Better Run
8. I Get By
9. Chinatown
10. Come Back To Me
11. Universal Gleam
12. I’ve All I Need

アナログ盤でいうと1〜6までがA面、7〜12がB面ですね。ただインタビューを見る限りリアムはアナログ指向ではないようなので、その辺はあまり気にしなくてよいかもしれません。

順番に見ていきましょう。
詳細なレビューは他所にお譲りして、ここでは聴いていて感じたことをざっくり書いていきたいと思います。よろしくお願いします。


1. Wall Of Glass
リード曲でシングルにもなっていたWall Of Glassが一曲目です。ストレートなギターロックをやるというのが今回のテーマだそうで、それに相応しい王道です。王道といってもリズムはダンスミュージックに近い感じで、コテコテの60年代風ブリティッシュビートとはまた違ったテイストです。
比較的早い時期からYouTubeでMVが公開されていて、「リアム、声全然いい感じじゃん!」と思った覚えがあります。
この曲はたしかプロデューサーとして携わったグレッグ・カースティンが持ってきたそうです。作詞はおそらくリアムで、one directionが歌詞に出てきたりして物議をかもしていました。
ボーカルももちろん、絶妙な音程感のサイケなギターリフや硬質なベースも美味しいです。MVもクール。

 

2.Bold
2曲目にしては落ち着いた曲調で、でも歌詞を見るとやさぐれていて不遜で、なんというかまさにリアム・ギャラガーのイメージ通りな感じです。
この曲に限らず今回かなりアコースティックギターが多用されていて、そこも特徴の一つかと思います。音数は決して多くないのに重厚に聴こえるのは、やはり何と言ってもリアムの声の力が大きいのでしょう。
個人的に間奏後のCメロが気だるいながら迫力あって好きです。

 

3.Greedy Soul
今回オアシス成分が一番強いなぁと思うのがこの曲です。シンプルなコード進行とギターリフで突き進むナンバーで、確かリアム自身一番のお気に入りがこの曲だったはずです。確証はないですが、この曲はほとんどの部分をリアム自身が自作したんじゃないかと思ってます。
歌の入りはSupersonicを彷彿させるようなメロディですね。吐き捨てるような歌い方がよく合います。歌詞も、貪欲な魂と生きていくぜ!という非常にハングリーな世界観です。若い頃成功した45歳の詞じゃない。
ライブ版だとエレキギターで演奏されており、よりヘヴィなアレンジになっているようです。

 

4.Paper Crown
こちらは一転してゆったりしたナンバーで、アコギ一本の弾き語りから段々楽器が増えて盛り上がっていく構成です。語りかけるような歌い方で、歌詞はおとぎ話のような抽象的なもののようです。Greedy Soulもそうですが、こういうシンプルな造りの曲ほどボーカルがよく映えますね。元々の声質に、歳を重ねたシンガー特有の枯れた感じの成分が加わっていてとても格好いいです。

 

5. For What It’s Worth
アルバム発売前にリリックビデオが公開されていた曲ですね。
こちらは何と言っても「俺が間違っていた」と歌う謝罪ソングであるという、ある意味で衝撃の一曲です。過去あれだけ不遜で素行の悪さが取り沙汰されていたリアムが、まさかこんな曲を作って歌うとは。
しかし本人的には最もオアシス的な曲とのことで、確かに曲構成やメロディにはDon't Look Back In Angerを思い出させるような匂いがあります。考えてみればDon't Look Back In Angerにも、歌詞は抽象的ながらも過去を許して受け入れていこうというようなニュアンスがあり、その点でテーマ的にも通じる所があったのかもしれません。
それだけに、ツアーでも合唱曲になりうる魅力を持った曲のように思えます。

また前述の通り謝罪ソングではあるものの、決して自分を貶めるような言葉はなく、またすぐに「人は道を見失うことだってあるさ」と切り替える所まで含めると、やっぱりそこはリアムらしくもあります。

 

6. When I’m In Need

こちらもギター1本から始まるナンバーですね。コーラスがとても綺麗です。シンプルなラブソングという感じで、後半のリバーブが深めに入ったシンセやほんの少し入った逆再生などからサイケな印象も受けます。
歌詞にPurple Hazeなど著名なロックナンバーの名前が入ってくるあたりは、オアシスの頃からよく見られる手法ですね。


7. You Better Run

B面一曲目です。お前なんか全然大したヤツじゃないぜ、逃げろよ、隠れろよ!ってことで、一転攻勢の曲です。For What It’s Worthの後に平然とこういう曲がくる、この切り替えが素敵です。
たしか、若手のロッカーにハッパをかける曲だというインタビューがあったような覚えがあります…。
サビでのGimme ShelterとHelter Skelterを連呼、これもやっぱりストーンズビートルズのリスペクトでしょう。

 

8. I Get By
カウントなしのイントロからいきなり強烈に歪んだギターリフが響く、激しさで言えば今アルバム中でも屈指の曲です。
ドラム・ベースによるリズムもかなり強調されていて、ガッシリ重厚なサウンドです。
俺の心を壊せるのは愛だけだ、という殺し文句は、やっぱりジョンレノンっぽいなあと少し思います。

 

9.Chinatown
事前にビデオが公開されていた曲その3です。ヘヴィなギターロックだったWall of Glassと対照的に、ほとんどアコースティックギターとパーカッションだけで進んでいく素朴な曲です。
いきなり中国…?と思ったのですが、ロンドンに中華街があるそうでそこの話のようですね。
「警察が全てを取り上げていった」「ヨーロッパ人って何だ?」「自由って何だ?」
という、珍しく政治や人種問題に触れるような歌詞が見られます。それもあってフォーキーな雰囲気もします。
ビートルズのHappiness is a Warm Gunの引用もありますね。この曲はジョン作だったと思いますし、やはりジョンレノンの思想が背景にあるのでしょうか。

また、そことは全然関係ないところですが、個人的にはリアムのサ行タ行の発音が歯切れが良くて好きです。


10.Why don't you come back to me
これはまたギターが前面に出たサイケ寄りの曲ですね。イメージとしてHindu Timesとかそのあたりに近いような感じでしょうか。
俺の所に帰ってこいよ!って、まあストレートなラブソングだと考えるのが妥当ですが、ほんの少しでもノエルに向けられてるのかな…?という気もします。
引っ掻き回すようなギターソロがいいですね。

 

11. Universal Gleam
曲名からして名曲感がすげえなぁと思って聴いてみたら、やっぱり凄く良い曲でした。
Universal Gleamは直訳すると宇宙の輝きということで、やはりオアシスのChampagne Supernovaを思わせる曲です。
歌い出しのコード進行はおそらくクリシェですね。これは半音ずつ音が下がっていくという一風変わったもので、有名どころでビートルズのSomethingでも見られる技法です。これは曲の壮大なスケール観を作り出すことに一役買っているように思われます。
この曲はリアムのソロクレジットということで、ソングライターとしての円熟度合いが伺えますね。
また、ゆったりしたツービートにこのクリシェ、深いリバーブのシンセが加わり、そこにスライドギターが入ってくる感じはジョージ・ハリスンも想起させますね。当然、大いに影響を受けているのでしょう。

メロディの良さも個人的にはアルバム随一だと思います。一聴して「バーン!すげえ!!」って感じではなかったのですが、何度も聴いてみるとじっくり良さがしみてくるタイプの曲ではないでしょうか。
Cメロのコーラスがすごく好きです。
誰に向けた曲なのかは分かりませんが、「俺も歳をとった」といいながら不思議と悲壮感はなく、気取らずに前を向くような姿勢がうかがえます。

 

12.I've All I Need
ボーナストラックを除けば、これがアルバムラスト曲にあたります。それもあってか、心なしか感謝の言葉が込められた優しい感じの曲です。ずっと1つのコードが鳴っているところにアルペジオとメロディが乗っかってくる感じがなんとも心地よいです。
Tomorrow Never KnowsやAll Things Must Passという言葉は、またまたビートルズおよびジョージ・ハリスンの曲名からの引用ですね。
いや、ビートルズ好きすぎでは…。
完全に憶測ですが、今回ソロ名義でリアムが初めて作詞作曲を自ら主体で担当してアルバムを作るにあたり、参考にしたのがやはり自身のルーツのビートルズとその後の各メンバーのソロ活動だったのではないかと思います。
それこそ特に、ジョージハリスンのソロアルバムであるAll Things Must Passの影響が色濃いような印象です。12曲目にそのタイトルを織り込んでくるのはネタばらしか、それともクレジットのような意味合いなのか。
…というのは考えすぎでしょうか。。


はい。

一曲ずつ見ていってもマジで粒揃いな印象で、とても楽しんで聴いています。

しかし、リアムがソロでこれだけ良いアルバムが作れることが証明されたいま、オアシスを再結成する可能性がさらに遠のいてしまったような気もします。
つまり、ギャラガー兄弟がそれぞれ一人一人でも十二分にやれる事が分かった以上、わざわざ過去のわだかまりに踏み込んでオアシスを復活させようとはしないんじゃないかと。
オアシスを観たことがない身としては、それはそれで複雑な気分ではあります。しかし、今はそれぞれのソロ作品が今後どうなっていくのか、またライブはどんなものになるのか、そのあたりをもう少し見てみたいという気持ちもありますね。

何より今月は兄貴の新作が控えています。
そちらもそちらで凄まじいことになっていらはようなので、とても楽しみですね。

今回もまたメッチャ長くなってしまいましたが、ここまで読んで下さりありがとうございました。

ロックンロールバンドの脱ロック化?

 

お久しぶりです。

随分間が空いてしまいました。
ちょっと色々やっつけなきゃいけないことが積み重なりまして、実に一ヶ月以上ぶりの投稿となります。

ロッケンローサミットに行ったり、リアム・ギャラガーの新作アルバムがとにかく最高だったり、とてもいいビートルズ考察本を手に入れたりと書きたいことはいくつかたまっているのですが、今回は久々にということもあり、このところずっと考えていることについてまとめてみたいと思います。それは、
「ロックンロールバンドの脱ロック化」
ということです。
今までずーっとロックンロールをやっていた人達が、ここ最近になって急に揃って違う音楽を基軸に動き出している、ような気がするのです。

たとえば、今年の初めにドレスコーズが平凡というアルバムを出しております。

これがもう、ゴリゴリのファンクアルバムだったんですね。
ドレスコーズは、アルバムによってテーマは異なるもののなんだかんだずっとロックンロール、パンク中心の曲を出し続けていたように思います。それが、ここにきて全然違う方向のアルバムが出てきたわけです。もっともこの平凡に関しては、ロックンロールかファンクかというところ以前になかなかブッ飛んだ思想が詰め込まれていて、バンド自体を根っこから作り変えたみたいなもののようなのですが・・・。

このアルバムが出ただけでも今年前半かなり驚いたのですが、なんだかそれ以降も時折、ロックンロールを求めていたら全く他のものに突き当たることが多くなったような気がするのです。

例えば、OKAMOTO'Sです。オカモトズといえば、若手ながらブラックミュージックに傾倒したサウンドが特色のバンドです。じつは僕はあまりじっくり聴きこんでないんですが、今回出た新しいアルバムのリード曲がこのNO MORE MUSICです。

はい。これも今までと随分雰囲気の違う曲になっているようです。
元々オカモトズは幅広く色々やるバンドではあるようですが、泥臭いロックンロールからは一歩離れた所から出来てきた印象です。
どこか音楽業界を憂うような歌詞でもあり、時代の流れを感じてこういう変化に至ったのかな…と思われます。

また、今年のロッケンローサミットでも脱ロックの風潮を感じました。
ロッケンローサミットが脱ロックしたらもうそれロッケンローサミットじゃないじゃん、と思うのですが、そうなのです。
そりゃあ50回転ズはいつも通り最高でしたし、後半のニートビーツ、マックショウ、そしてギターウルフの大暴れによるヒートアップはいつ見ても圧巻でした。
そこは不動としても、おやっと思ったこととして、なんとスカバンドが2つもあったんですね。Bloodest SaxophoneとMORE THE MANというバンドです。Bloodest Saxophoneは港町の船乗りのような出で立ちの渋いジャズバンドで、MORE THE MANはスカパラの元メンバーが若手を集めて作ったという、明るく熱気のあるバンドでした。どちらも演奏すごく良かったです。
ロッケンローサミットには僕はまだ行き始めて数年ですが、こういうロックンロール主体ではないバンドがいくつも出てきたのは近年珍しいことなんじゃないかと思います。
少し前は、終われど終われど革ジャンリーゼントばかり舞台に出てくるようなフェスだったと思うのですが・・・。
今年もすごく楽しかったので寂しいとかはないですが、時代の変化の兆しがここにも見えているような気がしました。


話は前後しますが、このドレスコーズ(というか、志磨さん)とオカモトズの対談が、ちょうどまさにこの脱ロックという話に触れています。
どちらのバンドもほぼ同じ時期にロック以外のジャンルに進んだアルバムを出したということで、そのあたりのことがテーマになっているようです。
これ面白いのが、たとえば流行りの音に近づけてみたとか、はたまたバンドが円熟してロック以外のジャンルに手を出し始めたとか、そういった今までのいわゆるよく聞くような「脱ロック」のフォーマットとは全く別の意図からのアプローチの結果だったらしいということです。
多分この人達はロックの熱量が好きで、ロックをやりたいのに、それをいざ表現にしてみると時代がそれをロックの形に留めさせてくれないという、なんだか難しいですがそのような事のようです。
それは音楽の定額無料配信化や、資本主義の限界が見えてきていることや、そういった様々な事が絡んでの結果なのでしょう。

言ってしまえば、今この時代にロックンロールイェーーイってやってても、それは60〜70年代にロックンロールをやる事とは、根本的にもう意味が違うと。だから、ロックンロールをやっていても仕方がない。
なんとなく、そういう話なのかなーと思います。

聴く側としてはApple Musicで色んな時代の音楽が好き放題聴けるようになったし、ライブ文化も栄えてきたし、楽しいなあってなもんですが、作り手としてはロックンロールってどんどん扱いが難しいものになってきているのかもしれません。

これからどうなってくんだろう・・・。

エルヴィス・プレスリー没後40年


こんばんは。
クロマニヨンズのツアー、プレオーダー外れました・・・。
何だろう、最近ほんと当たりにくくなりましたね。二次で当たることを祈ります。

先日テレビを見ていたら、今年はエルヴィス・プレスリー没後40周年だというニュースが流れてきました。
そうだったんですねー。

ロックンロール創成期、50年代のロックスターの一人ということで、チャックベリーと同世代ですね。チャックベリーが90歳で亡くなったことを踏まえるととても早逝だったように感じられます。
もちろんそれでも、バディ・ホリーエディ・コクランよりは随分長生きですけれど…。
ていうか、どちらかというとチャック・ベリーとリトル・リチャードがすごいですよね。

亡くなってしまったミュージシャンに関しては当然新作発表もライブツアーもないわけでして、だからこそこういう記念事をキッカケにして聴き直してみるというのが大切です。

さて。

まずエルヴィスのイメージは、大きく分けて2つに分けられると思います。力強くワイルドなロックンローラーというイメージと、甘い歌声のバラード歌手というイメージです。

まずは前者のほう、白人にしてブラックミュージックを基調としたロックンロールシンガーであるという面について見てみます。
ボリューム上げていきましょう。


はい。出世曲のハートブレイク・ホテル、これはブルースですね。サビがなく、16小節をひたすら繰り返す進行です。
エルヴィスに限らず、50年代〜60年代のロックを分かるには当時の時代背景を考える必要があるように思います。
今でこそロックは、白人でも黄色人種でも誰がやっていても違和感のない音楽です。しかしこの1950年代当時は、ブルースやロックンロールというのは完全に黒人が楽しむためのものであり、基本的に白人の聴く音楽ではなかった時代です。その中で、ハンサムな白人の出で立ちでありながら黒人のようなシャウトと腰振りダンスを武器としたエルヴィスは、非常にセンセーショナルな存在だったという事のようです。
また、黒人そのものだったかというとそういう訳でもなく、白人文化のカントリーのフィーリングもちゃんと混じっていて、だからこそ幅広い層に受け入れられたという話もあります。

そのあたりの所を踏まえて見ると、エルヴィスの凄さがだんだん分かってくるように思います。

当時の世の大人達の評価としては「あんなに叫び散らして、しかもクネクネといやらしく腰を振る奴が出てきた、けしからん!」という事だったようで、そこが逆に大人を嫌う若者達にウケたのだそうですね。
Hound Dogや監獄ロックあたりは、今聴いてもパワフルかつセクシーです。

ちなみに問題の腰振りがこちらになります。そんなに下品には見えないのですが、これでアウトだったというと当時はすごくテレビが厳しかったんですね…。
また、雄々しく男性的な面だけでないのがミソです。たとえばTeddy Bearなんていう曲もあって、これは「彼女のクマちゃんになりたい!」みたいな歌詞です。こんなちょっとカワイイ素振りも初期から見せています。意外とナイーブだったり、カワイイ路線で攻めてみたりもしてるんですね。
ヤンキーは実はフワフワしたものが好きだ、とはよくいいます。こういう一面があるからこそ、かえってやんちゃなイメージが際立つというものではないでしょうか。

続いて後者の甘い歌声の方です。

軍役後の60年代に本格的にこの路線になったという話ですが、50年代の曲にも甘〜いラブソングがあります。
Love Me Tenderなんか、監獄ロックとは別人かと思うほど繊細な歌い方ですね。激しい曲での腰振りとはまた違った意味で色気があります。
ロックンロールというと、どうしてもバーン!ドカーン!!みたいなものを想像してしまいますが、 実はこういう元祖といわれるような人でも色々な顔を持っていたような、懐の深いジャンルなんだなと改めて思わされます。考えてみればストーンズRuby Tuesdayがヒットしていたりするので、良いバラードを持っているというのはロックスターをスターたらしめる一要素なのかもしれません。

いずれにしてもエルヴィスに関しては、ガラの悪い不良というイメージはあんまりなく、生き生きとした肉体性と色気、そういうエネルギーに溢れたミュージシャンという印象です。

それは悪とか反体制じゃないからロックっぽくないということではなくて、本来ロックンロールはそういう身体性こそが魅力なのだという事なんだと思います。

 

ゆがんだ唇エルビス、格好いいです。

ドレスコーズ「国家」が届いた

 

こんばんは。
8月も終わりです。朝夜がちょっと秋めいてきましたね。

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先日、ドレスコーズの「国家」が届きました。これはドレスコーズの最新アルバム「平凡」の発表にあわせて行われたmemeツアーのファイナル、新木場Studio Coastでのライブの様子を収めたブルーレイになります。

 

この「平凡」というアルバムについては以前にも書きましたが、非常に衝撃的なアルバムでした。これは所謂コンセプトアルバムで、「個性が否定され、普通であること、平凡であることこそが美徳とされるようになった近未来社会で発表された作品」という形をとっています。そのコンセプトもさながら、これまでのドレスコーズと全く異なりファンクを主軸にした独特な曲から構成されており、思想的にも音楽的にも異色の作品に仕上がっています。
要は、今までずっと長い髪で派手な衣装で古き良きロックンロールをやり続けていた人が、突然「個性なんていらない!平凡最高!!」と灰色のスーツを身にまとってファンクをやり始めたということで…。
最初は「ど…どうした!?」という感じでしたが、実はこれは現代社会への違和感と新たな時代の到来の予感から、ロックカルチャーひいてはサブカルチャー全体への問題提起のために作り出された、非常に示唆に富んだアルバムであるということが徐々に明らかにされました。

今回の「国家」はその平凡さんのライブビデオと、さらにアルバムの詳細な解説やインタビューなども収録されており、どういった思想のもとにこのアルバムが制作されたかということがよく分かる内容になっています。
ちなみに限定生産なのでもう手に入りません。

こんなに作り込まれてるのに、もったいない・・・。

よく分かるとはいいましたがそれは詳しく書いてあるという意味で、やはり内容自体はかなり難解です。なにしろレコーディングの話から音楽産業の変遷、ひいては資本主義や構造主義というところにまで話が及んでくるので、完全に理解しきるには勉強が必要そうでした。
ただ全体的な印象として、恐らくこれは「アーティストへの問題提起」なんだろうなと思います。これから近い未来に社会が大きく変わっていく中で、アーティストはどのような表現をしていくべきか?また既存のカルチャーをどんな風に受け継いでいけばいいのか?
ざっくりした言い方をしてしまえば、そういう問いのように思います。
ただカルチャーを娯楽として楽しむだけの立場で抱える悩みではなさそうです。
それはつまり、この平凡を土台にしてまた様々な作品が出てくることが期待されるってことで、これは今後また形を変えて出会う思想なのかもしれません。

 

音楽的な部分に関してですが、まず何より、シンプルに滅茶苦茶上手いです。
この新木場のライブは僕は観に行ったので、一度観たものを改めて観直すような格好になります。しかし、やっぱり落ち着いて聴いてみても非常に演奏はハイレベルです。リズム体がめっちゃ強い。規律/訓練の暴れっぷりとか、towaieの静寂な中でのグルーヴ感とか最高です。
そして志磨さんの「神経ダンス」、てんかんのような動きも斬新に映ります。これはロックンロールでよくある煽るための動きではないですね。ロックスターとは完全に別の身体を手に入れてきています。
それもあってか、激しいパフォーマンスで熱の入った演奏でありながら、どこか虚無感が漂うステージという印象になっています。これは改めて映像で観ても新しい感覚でした。
あげるとキリがないですが非常に見応えのある内容で、ほんと予約してでも押さえておいてよかったなあと思いました。

何よりこの「平凡」すべてが、20世紀のカルチャーへの決別でありながらそのカルチャーへの愛に満ち満ちていて、そこにすごく胸を打たれます。もうここにはいられないし、過去のものにしなくてはならない対象だけれども、すごく愛おしい。そういう切なさみたいなものが根っこにあるのが何とも味わい深いです。
そして、いわゆる古き良き文化が好きで仕方がない人達が、それでもこれから先の時代を見据えて、全く違う未知の方向に突き進んでいくというその様はすごく格好いいと思います。
というのも、たとえば僕なんかともすれば「60年代ロック最高!昔のロック最高!今の流行りは間違ってる!!」というイデオロギーに逃げ込んでしまいがちなところがどうしてもあります。しかし、 そんな懐古的な姿勢でいるよりも未来に向かう方がずっとカッコ良いじゃないかと。


「昔は良かった」と逃げ込まずに、今の時代を見てちゃんと行動に出ろ、悩め、と。


そう言われているような気がします。それは音楽に限らず、資本主義社会の先を生きなければならない世代全体にも通じることかもしれません。
これから折に触れて見返す作品になりそうです。

大事にとっておきたいと思います。


あとは、もう、一番の元ネタであるところのTalking Headsストップ・メイキング・センスも、近いうちに観なきゃいけないですね…。

他にも色んな本、映画、元になったアートのことが「国家」の中で沢山ネタバレされていたので、ここからでも相当掘ることができそうです。
忙しくなります。