ロックンロールで一夜漬け

ロックンロールで一夜漬け

音楽に踏み込む探検日記

ドレスコーズmemeツアーファイナルに行ってきた

 

 

おはようございます。

新学期ですね、週末で散るといわれていた桜が意外とまだ元気です。

 

昨日、新木場スタジオコーストドレスコーズmemeツアーファイナルに行ってきました。

このあいだ出た最新アルバムの「平凡」を聴いてめっちゃ衝撃を受けまして、これはライブを観に行かなくてはと思い立った次第です。

アルバムはエゲツない程ファンキーな演奏で、なおかつ20世紀のカルチャーそのものと決別するかのような世界観がぶちこまれた、とんでもない作品でした。

それを引っさげてのこのライブだった訳ですが、これももう輪をかけて大変なものを観させられた印象です。

普段飽きもせずロックンロールのライブばっかり行ってる身からすると、正直「訳わかんないけどすごい、やべぇ」意外の言葉がないですね…。DVD出たら買います。これは本当にじっくり観ないと分からない。

とはいえ、折角ライブに触れた直後ですので、一回ここで改めて振り返ってみたいと思います。

 

まずセットリストですが、 

1.common式

2.平凡アンチ

3.マイノリティーの神様

4.towaie 

5.メロディ 

6.ストレンジャー

7.規律/訓練

8.Automatic Punk

9.ヒッピーズ

10.エゴサーチ&デストロイ

11.人間ビデオ

12.ゴッホ

13.アートvsデザイン

 

encore

1.人民ダンス

2.20世紀(さよならフリーダム)

 

 でした。過去曲もいくつか見られますが、ほとんどはアルバムの再現に徹している感じですね。今回かなり飛び抜けて異質なので、当然といえば当然かもしれませんが…。

またドレスコーズは、フロントマンの志磨遼平以外はライブの度に毎回メンバーが変わることで知られています。今回はというと、まずホーンが3人、パーカスが1人、そしてドラム、ベース、ギター、ボーカルという8人編成でした。

ホーンとパーカッションがいて、平凡のアルバム音源をほぼそのまま再現できる編成となっていましたね。

 怪しげなSEが流れてメンバーが登場すると、これもまた不穏なギターの音色から始まって、そのまま挨拶なしに一曲目のcommon式へ。ボーカルの志磨遼平は終演まで一貫して、グレーのスーツとシャツに眼鏡のいでたちでした。ジャケット写真の通りの格好ですが、実際に見ると尚更異質です。

動きはなんだか独特で、普段とはロックスター然とした振る舞いとはまた一味違う様子でした。手足を振り回す激しい動きは減って、かわりにパントマイムのように両手で壁を作るようなポーズなんかが多かったです。なんというかカクカクしていて、人形やロボットみたいな感じでした…。

演奏に関しては、まずcommon式、平凡アンチなどアルバムでも好きだった曲はますます磨きがかかってゴリッゴリになっていてめっちゃ良かったです。ファンクって元々はソウルをさらに泥臭くしたような黒人音楽で、本来はめっちゃ生々しいものであるはずですが、衣装や歌詞、パフォーマンスも相まって「熱く激しいのに虚無」というような、観たことないような何かになっていたように感じました。

他の曲に関して言えば、規律/訓練がずいぶんライブ化けしたなというのが印象的でした。あんなに大暴れする曲だったとは。ホイッスル吹きまくって号令みたいなポーズで叫ぶ志磨さんの横でギターを地面に叩きつける有島コレスケとやべえ絵面でした。そしてこの規律/訓練のあとに過去曲のAutomatic Punkをぶっこんでくる展開も難しくて最高です。この2曲ってわりと対極の主張のような気がするんですが…。

 ギターといえば、今回ギタリストは有島コレスケでした。普段ベーシストとしてよくドレスコーズに登場する方ですね。ギタリストとして観るのは初めてでしたが、テレキャスター1本でファンクらしい16分カッティングから、ぶっといリードギター、飛び道具的なディレイから穏やかなクリーントーンアルペジオまで、非常に多彩な音色を使い分け1人で何役も担っているような様子でした。マルチプレイヤーで多彩な音世界を持ったベーシストって格好いいっすね…。

ベースは山中治雄、ドレスコーズの初代ベーシストですね。残りの初期メンバー2人と違ってどうもここ最近は主だった出番がなかったようですが、ここで再び登場したことで喜んだファンも多かったのではないかと思います。名前を叫ぶ声も聞かれました。

アルバム音源の吉田一郎も本当に大概ですが、それに劣らないゴリッゴリのベースでした。

特にAutomatic Punkのおどろおどろしいベースラインとコーラスが良かったです。この曲ファーストアルバムの中で一番好きなので、聴けて嬉しかったです。

テレビなんかより戦争がしたい。

 

また全体の構成で印象的だったのが、激しい演奏とは裏腹に、ライブ自体は終始とても淡々と進んでいったということです。煽るようなMCや語りはなく、大道具のような派手な演出もなし。 ただ曲が演奏されていくだけという、それ自体も平凡の表現の一つなんだろうなと思います。演奏以外で異常性のアピールや個性の主張を一切せず、演奏中も今までのドレスコーズのように客席に飛び込んだり、煽ったりもしない。

そして何より最後の曲、20世紀(さよならフリーダム)、これがとても良かったです。ファンク色を残しつつもテンポは抑えられ、歌謡曲といった方がいいような古き良き空気を醸す穏やかなメロディの曲でした。ロックバンドのツアーファイナルとは到底思えないような静かな終わり方でした。

しかし最後のメンバー挨拶では本当に誰もが良い笑顔で多幸感に満ちていて、ああこのツアーでこの人達がやりたかったのはこういうものだったんだな、と改めて思いました。

「さよならデヴィッドボウイ!さよならチャックベリー!さよなら資本主義!さよなら20世紀!ありがとう!」と叫び、笑顔で穏やかに終わる。そんなライブは、20世紀のロックンロールやカルチャーに精通し、なおかつ21世紀を生きる人達だからこそできるものだと思います。

 実は今回、個人的に音源とライブで一番違いを感じたのが、このライブ後の穏やかで幸せな空気感です。もっと喪失感のある感じかと思いきや、全然そんなことなく、むしろ真逆の余韻があるものだったのです。

曲のテーマは個性の否定なのに、とても個々のメンバーの持ち味が光る演奏。20世紀との決別の歌のはずなのに、その時代への愛に溢れたメロディ。熱いのにどこか虚無で、悲しいのに穏やかで前向き。色々と相反する要素がぶつかり合っていて、不思議な気分になるライブでした。 

また他に面白いなーと思ったのがライブ前後に流れていたラジオ風のBGMで、聞いた限りでは「今ではとても聴くことのできない20世紀の曲をご紹介いたします。放送禁止かもしれませんね。」といったmcがありました。これは「近未来のファンクバンド」という今回の設定に乗っかった近未来のラジオ番組ということだったのかもなと思います。こうしたSEやロビーのポスターなど、細かな所にも芸が細かい仕掛けがあって面白かったです。

 

はい。

 

以前ここに書いたことにも絡みますが、ライブも含めてこの「平凡」は、これからどんどん20世紀の文化の担い手が亡くなっていくという未来に向き合ったうえで、その事に対する一つの答えになりうる姿勢を提示しているのではないかと思いました。 

それはおそらく特に20〜30代の物好きにとって今後めちゃめちゃ大事になってくるテーマで、だからこそこのタイミングでこの作品に出会えて良かったと思います。

とはいってもこのままずっとドレスコーズがファンクギャングでいるとも思えないので、次はどんな形で来るのか楽しみでもあります。

 

ともあれ、DVD待ちです。