ロックンロールで一夜漬け

ロックンロールで一夜漬け

音楽に踏み込む探検日記

「CHUCK」について雑感

 

こんばんは。

2週に1回ペースの更新が板についてきました。

 

さる6月9日ロックの日に、チャックベリーの新作アルバム「CHUCK」が発売されましたね。チャックベリー38年振りの新作スタジオ音源にして遺作でもあるという、非常に大事な作品となること間違いなしの一枚です。

 

個人的な意見ですが、僕は基本的にロックンロールなんてものは、てきとーに気ままに聴きあさってヘラヘラ楽しんだらいいと思うのです。そりゃあ時に名盤中の名盤とといわれているようなものを聴くときなどは、多少心構えを持ってかかることもあるっちゃあります。でも元々は若者文化のサブカルチャーなのであって、そこはテレビをのんびり観るくらいの感覚で触れていいものだと思うのです。

何となくテレビつけたらサザエさんをやってたから観てみた、くらいのノリで聴きたいものを聴きたいだけ聴いて、飽きたら一回置いて他のことやったらいいんです。

この人を知らないでどうする、とかこのアルバムを聴かずしてロックを語るな、とかそこまで気張らなくてもいいんじゃないかな、と。

そう思うのですが…。

 

しかし、いや、チャックベリーは…。

チャックベリーだけは、ロックンロールという文化に触れる上で避けては通れない存在だと思います。ジョンレノンも、ロックンロールという言葉を言い換えるならチャックベリーだろう、と言っているくらいですし。

余談ですが、「ロックンロール 宇宙」で検索するとチャックベリーが関連項目に出てくるのアツいです。

恐らく、宇宙船に人類の音楽文化としてチャックベリーの曲が搭載されたという逸話からでしょう。どっかで宇宙人がロックンロールを聴いているかもしれねえというそのロマンですよ。

 

話が逸れました。ともかくそんなチャックベリーの新作「CHUCK」、発売日に御茶ノ水ディスクユニオンで買ってきました。アナログ盤です。

壁に3枚飾ってあって、そのうちの1枚を連れて帰ってきました。「チャックベリーの新作レコードを発売日に買う」という、それだけでももう今後一生できない体験だと思うと緊張しましたね。

ジャケットは黒い背景に大股でギターを抱えるチャックベリーと、非常にシンプルです。f:id:yoshima_ryoichi:20170619210256j:image

盤についてもシンプルで、白地に簡素な黒文字でCHUCKってタイトルと曲名があるだけ。

それ自体何か意味があるのか、無駄を削ぎ落としきったようなデザインです。

 そういえばチャックベリーってチェスレコードのアルバムが多いと思うのですが、今回これはデッカから出てるんですね。

同梱で本人直筆の歌詞と、晩年に近い姿の写真集が入っていました。ジャケットのチャックは多分今よりやや若い頃のものだと思うんで、ちゃんと今の姿が収められていてよかったです。歳とってるけどやっぱり絵になる、格好よいです。

クレジットを見ると娘や息子、孫が参加しているようで家族の協力があっての作品だったようです。後述しますがサポートってよりもゲストメンバーとしてガッツリ演奏が前面に出ていました。 

そして肝心の内容ですが、

「…あれ?普通に格好いい!!」

というのが第一印象でした。

「普通に」なんていうと語弊がありますが、いや何しろ最近のライブ動画が結構ヘロヘロだったので…。

さすがに90歳ですし、年齢的に歌とか大丈夫なんだろうか、と思っていた節もありました。

しかし、このアルバムに関していえば全然衰えは感じなかったです。元気。

曲ごとに見ると、やっぱりBIG BOY 、LADY B.GOODEあたりがモロにチャックベリー節全開って感じで聴いてて楽しかったです。特にBIG BOY は「これこれ!」と言いたくなるような王道フレーズも入りつつ、コーラスの掛け合いなどは既存曲と比べても非常にキャッチーな印象でした。トム・モレロ参加曲なんですねー。

イントロの歌詞も「俺がお前たちくらいだった頃はよ〜」てな感じで、90歳に言われるとなんだかワクワクします。

チャックベリーというとギターのフレーズが何より有名ですが、実は歌も凄いんですよね。歌詞でしっかり韻を踏んだうえで跳ねるリズムで畳みかけるように歌うので、歌だけでも踊れるようなグルーヴがあります。今回もその魅力が十二分に味わえます。

作詞家としても評価が高いというのもうなずけます。考えてみれば Roll Over Beethoven、ベートーベンをぶっとばせ!なんてフレーズもすっごいパンチラインですよ。

LADY B.GOODEはジョニビグーの焼き直しといってしまえばそれまでですが、ギターに息子、孫が参加しているとのことで親子三代の共演を果たした一曲という点で味わい深いです。

どのソロが誰だろうなんて考えるのも楽しいですね。

この二曲はど真ん中の王道ロックンロールでしたが、ではアルバム全体が最初っから最後までロックンロール一辺倒かというとそんなことはなく、かなり色々な曲があるのも面白いところです。たとえばA面4曲目の3/4 Timeという曲はワルツ調で、ぶんちゃっちゃーぶんちゃっちゃーというリズムの曲です。歌も歌うというより語るような感じで、跳ねるリズムでグイグイ押していくのとはまた違った良さがあります。

Jamaica MoonはHavana Moonの焼き直しにあたる曲でしょうか。ギターの音が複数ダビングされてるのと、コーラスがしっかり入ってるのでHavana Moonよりちょっと豪華ですね。

たしかキース・リチャーズがチャックの曲で一番好きなのがHavana Moonだという話があったので、さぞかしこれを聴いて喜んでいるのではないでしょうか。

 また曲順ラストにあたる Dutchman〜Eyes Of Man、これらも語りかけるような曲調です。

自分の最後のアルバムに、エレキギターを弾き倒すような曲やインスト曲ではなくこういった言葉を聴かせる曲を多く入れているあたり、本人の自己認識としてはギタリストというよりシンガーだったのかもなあとも思います。

 

・・・こう振り返ってみると、過去曲の自己オマージュだったりひたすら喋ってるだけだったり、冷静に考えるとなかなか首をかしげたくなるような事を沢山やってますね。

でもそれが格好良くて、しかも聴き飽きない仕上がりになっているのは流石も流石で、やっぱり大発明だったんだなと改めて思いました。