「The 50kaitenz」を聴いた
こんばんは。
最近どうも生活が…っていうか人生がてんやわんやで、更新スピードが落ちてきました。
それでもどうにか、ギターを弾いて新譜を漁って生きております。
今回は、ザ50回転ズの新作についてです。
ほんともう、大好きなバンドの1つです。
もしかしたら一番ライブで観た回数の多いバンドかもしれないくらいです。
スリーピースバンドで、モッズスーツにおかっぱ頭というコッテコテの格好でラモーンズのような高速ロックンロールをやりよる人達です。
曲はロックンロールへの深~いリスペクトが感じられるものばかりで、チャックベリー、ラモーンズ、AC/DC、ハードロックから演歌まで守備範囲は幅広く、ロックカルチャーの博物館のようなバンドですね。
今回は、本人達曰く9年ぶりのフルアルバムとして今年リリースされた、「ザ50回転ズ」について書いてみたいと思います。
9年ぶりといってもミニアルバムやシングルはほぼ毎年出していたので、久々の楽曲制作ってわけではなかったりします。しかし、フルアルバム単位で50回転ズの新曲を聴くのは確かに新鮮です。今作もまた、ど真ん中のパンクロックからカントリー、モータウン、ジャズ、演歌と古今東西詰め合わせといった内容で素晴らしいですね。かっけぇ。
バンドの名前を冠したアルバムというだけあり、引き出しを全部開けて詰め込んだ作品なのかなと思います。「俺たち、こんなロックやってるぜ!!」というメッセージがビシバシ伝わってきます。それを結成10年でやるのがスゴイ。
そういった意味で1stと比べたくなりますが、より音が丸っこくキラキラして聴きやすくなり、でもバーンとくる衝動は変わらず、熟成度が増したような印象です。
順番に見ていきましょう。
・Vinyl Change The World
一曲目に一番のキラーチューンを持ってくるあたり、流石です。これは以前EPでも発売されていて、結果的にリードシングルにあたる曲ですね。
レコードは世界を変えるぜ!!と。
この人達が言うと説得力が違います。
EPの音源からまた再録されていて、また少し違った味わいになっています。
EPの方はよりビンテージっぽい音作りでしたが、こちらはライブをそのまま録音した(実際そういう録り方のようですが)ような感じで、より熱量があります。
ロックンロールを聴けば時空を超えてぶっ飛ばされて、その間は悩んでることも何も怖いもの無しになるんだっていう、そういうロマンは醍醐味ですね。
ウィルコ・ジョンソンの影響の色濃いカッティングリフがいい味出してますね。
サビはこれ、かなりそのまんまマーシーの情報時代の野蛮人では…と思うのですが、それもよしと。
裏メロの単音ギターもマーシーの曲をとても彷彿とさせます。やっぱりブルーハーツがルーツなだけあります。
また2番で絡んでくるアナログシンセが、今までの50回転ズにはない仕掛けですね。
今回のアルバムは全体的にキラキラ感がすごくありますが、シンセの使用も大きな要因だと思います。
・星になった二人
てってってー、てってっててー、と。
これはもうモータウンのお決まりフレーズですね。斉藤和義の「歩いて帰ろう」と同郷の曲でしょう。
途中ボ・ディドリーのジャングルビートに切り替わるあたりがまた美味しいところです。
50回転ズでモータウンというと「放課後のロックンロール」が思い浮かびますが、今回のこの曲はよりオールディーズっぽく、甘くポップな音作りになっています。
コーラスも綺麗ですね。
・新世界ブルース
演歌は日本のブルースだ!!
という本人達の言葉通り、コッテコテの演歌です。地名が入って男と女の情感がテーマ、と。「演歌風ロック」ではなく、くどいくらいど真ん中の演歌なところが50回転ズらしいと思います。ギターソロはファズかませたような潰れた歪みでまた渋いです。
いつの新世界だ。
・クレイジー・ジジイ
5曲目にしてボギーの趣味が発動という感じで、ハードロックです。
ここ二曲が濃ゆすぎて胃もたれしそうです。最高。AC/DCのようなロックンロールをヘヴィにした曲調かと思いきや、途中からテンポアップして途端にDeep Purpleばりの70年代ハードロックやで~~~ってな感じにシフトするのが面白いところです。
心なしかドラムが楽しそうです。
ギターとベースのユニゾン部分など、ハードロックとしては王道でも50回転ズでは非常にレアですね。
後ろで鳴ってるアナログシンセもなんともDeep Purpleです。
元々色んな曲をやるバンドでしたが、今回さらに個々の芸に磨きがかかってるような気がします。
・ちんぴら街道
三味線ロックです。
そんなことまでやるのか…。
ちんぴら3匹お邪魔します、というあたり実は「レッツゴー三匹」と同じテーマですね。
流れ者の独り言、というような曲ですが、この人達の暮らしそのままだと思うとロマンでしかないですね。
三味線だけれどもBメロのフレーズがどう聞いてもDr.FeelgoodのRoxetteなのがウケます。三味線とパブロック組み合わせようとするのはこの人達くらいなものでしょう。
・ホテルカスパ
これは一変して、ジャズやロカビリーに寄った曲ですね。ウッドベースが渋いです。
歌詞も含めて世界観が一気に都会的になり、それこそ世界中を飛び回っているような目まぐるしさですね。
この曲は特にギターソロが良くて、リバーブきいたローファイな感じがたまらんです。
・デヴィッド・ボウイをきどって
ボウイというからグラムロックかな、と思ったらそんなことはなく、ここにきて真っ直ぐなパンクロックでした。ドリー曲ですね。
ドリーがボーカルの曲は歌詞がロマンチックで、10代の青さがより前面に出てるのが印象的です。星屑の歌、というのはジギースターダストのことでしょうね。
シンプルながら、歯切れのいいギターリフもいい感じです。
・11時55分
これはフォーキーな曲ですね。Ticket to rideなんかも思い出されるような、ビートルズ中期のちょっとフォークに傾倒してる時期の匂いがします。
そしてやはり、メロディがやはりマーシーっぽいですね。夏とか銃声とかあの子にキスとか、歌詞にもブルーハーツ時代のマーシーの叙情性を感じます。
・純情学園一年生
タイトルからしてティーンエイジャーの青春パンクなんだろうなーと思って、まさにその通りでした。
今回アナログシンセがほんとに多用されていて、さも50回転ズの定番かのごとく組み込まれてますね。
シンセが入ったぶんギターがシンプルにまとめられてる印象で、ライブ映えしそうです。
・あの日の空から
ちょっとオルタナっぽい入りから、また真っ直ぐなパンクロックになだれ込む構成です。
「なりたくなかった大人にお前もなったのかい?」というあたりは、なんとなく清志郎っぽい感じでもあります。
A面で古今東西さまざまなジャンルを取り入れている一方で、B面にはストレートな青春パンクが多く組み込まれてますね。
・行こうマチルダ
ラスト曲で、ドタバタで陽気なカントリーですね。最後に明るく終わるあたりが50回転ズらしいです。このヅッツク、ヅッツク、というエレキギターのバッキングは実はすごい難しいと思うんですが、サラッとやりきってますね。
マンドリンもいい味出してます。
はい。
改めてこうして見てみると、初期の頃のパワフルでごった煮の雰囲気はそのままで、より色彩豊かになったような感じがしますね。
硬派なギターロックをやっていたバンドがシンセや色々な楽器を入れるようになると、華やかな反面ちょっと寂しかったりもします。でも50回転ズは不思議とそういう感じが全然しないですね。やっぱり、音楽的な基盤がすごくしっかりした人達だからこそだと思います。
ツアー行けるかわからないんですが、どういうアレンジでくるかもまた楽しみです。
アナログ盤欲しいけど、限定しかないからな…。