ロックンロールで一夜漬け

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音楽に踏み込む探検日記。月曜更新

ドレスコーズ「国家」が届いた

 

こんばんは。
8月も終わりです。朝夜がちょっと秋めいてきましたね。

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先日、ドレスコーズの「国家」が届きました。これはドレスコーズの最新アルバム「平凡」の発表にあわせて行われたmemeツアーのファイナル、新木場Studio Coastでのライブの様子を収めたブルーレイになります。

 

この「平凡」というアルバムについては以前にも書きましたが、非常に衝撃的なアルバムでした。これは所謂コンセプトアルバムで、「個性が否定され、普通であること、平凡であることこそが美徳とされるようになった近未来社会で発表された作品」という形をとっています。そのコンセプトもさながら、これまでのドレスコーズと全く異なりファンクを主軸にした独特な曲から構成されており、思想的にも音楽的にも異色の作品に仕上がっています。
要は、今までずっと長い髪で派手な衣装で古き良きロックンロールをやり続けていた人が、突然「個性なんていらない!平凡最高!!」と灰色のスーツを身にまとってファンクをやり始めたということで…。
最初は「ど…どうした!?」という感じでしたが、実はこれは現代社会への違和感と新たな時代の到来の予感から、ロックカルチャーひいてはサブカルチャー全体への問題提起のために作り出された、非常に示唆に富んだアルバムであるということが徐々に明らかにされました。

今回の「国家」はその平凡さんのライブビデオと、さらにアルバムの詳細な解説やインタビューなども収録されており、どういった思想のもとにこのアルバムが制作されたかということがよく分かる内容になっています。
ちなみに限定生産なのでもう手に入りません。

こんなに作り込まれてるのに、もったいない・・・。

よく分かるとはいいましたがそれは詳しく書いてあるという意味で、やはり内容自体はかなり難解です。なにしろレコーディングの話から音楽産業の変遷、ひいては資本主義や構造主義というところにまで話が及んでくるので、完全に理解しきるには勉強が必要そうでした。
ただ全体的な印象として、恐らくこれは「アーティストへの問題提起」なんだろうなと思います。これから近い未来に社会が大きく変わっていく中で、アーティストはどのような表現をしていくべきか?また既存のカルチャーをどんな風に受け継いでいけばいいのか?
ざっくりした言い方をしてしまえば、そういう問いのように思います。
ただカルチャーを娯楽として楽しむだけの立場で抱える悩みではなさそうです。
それはつまり、この平凡を土台にしてまた様々な作品が出てくることが期待されるってことで、これは今後また形を変えて出会う思想なのかもしれません。

 

音楽的な部分に関してですが、まず何より、シンプルに滅茶苦茶上手いです。
この新木場のライブは僕は観に行ったので、一度観たものを改めて観直すような格好になります。しかし、やっぱり落ち着いて聴いてみても非常に演奏はハイレベルです。リズム体がめっちゃ強い。規律/訓練の暴れっぷりとか、towaieの静寂な中でのグルーヴ感とか最高です。
そして志磨さんの「神経ダンス」、てんかんのような動きも斬新に映ります。これはロックンロールでよくある煽るための動きではないですね。ロックスターとは完全に別の身体を手に入れてきています。
それもあってか、激しいパフォーマンスで熱の入った演奏でありながら、どこか虚無感が漂うステージという印象になっています。これは改めて映像で観ても新しい感覚でした。
あげるとキリがないですが非常に見応えのある内容で、ほんと予約してでも押さえておいてよかったなあと思いました。

何よりこの「平凡」すべてが、20世紀のカルチャーへの決別でありながらそのカルチャーへの愛に満ち満ちていて、そこにすごく胸を打たれます。もうここにはいられないし、過去のものにしなくてはならない対象だけれども、すごく愛おしい。そういう切なさみたいなものが根っこにあるのが何とも味わい深いです。
そして、いわゆる古き良き文化が好きで仕方がない人達が、それでもこれから先の時代を見据えて、全く違う未知の方向に突き進んでいくというその様はすごく格好いいと思います。
というのも、たとえば僕なんかともすれば「60年代ロック最高!昔のロック最高!今の流行りは間違ってる!!」というイデオロギーに逃げ込んでしまいがちなところがどうしてもあります。しかし、 そんな懐古的な姿勢でいるよりも未来に向かう方がずっとカッコ良いじゃないかと。


「昔は良かった」と逃げ込まずに、今の時代を見てちゃんと行動に出ろ、悩め、と。


そう言われているような気がします。それは音楽に限らず、資本主義社会の先を生きなければならない世代全体にも通じることかもしれません。
これから折に触れて見返す作品になりそうです。

大事にとっておきたいと思います。


あとは、もう、一番の元ネタであるところのTalking Headsストップ・メイキング・センスも、近いうちに観なきゃいけないですね…。

他にも色んな本、映画、元になったアートのことが「国家」の中で沢山ネタバレされていたので、ここからでも相当掘ることができそうです。
忙しくなります。