ロックンロールで一夜漬け

ロックンロールで一夜漬け

音楽に踏み込む探検日記

「As You Were」と「Who Built The Moon?」

 

こんばんは。

クリスマスからの年の瀬への、世の中の切り替えの早さが結構好きです。

今年最後の更新になります。今年もまた色々な音楽に触れてきましたが、やはり個人的にはオアシスが一番のブームでした。
映画スーパーソニックが公開されたり、ノエル・リアムそれぞれのソロ作品がリリースされたりと、ちょうど関連するイベントが多かったのもあり、ハマるにはよいタイミングだったように思います。
僕のような20代前半の若輩にとってロックンロールはどうしても後追いになることが多いので、こういった過去の良きバンドが改めて取り上げられる風潮は非常にありがたいことです。

ということで今回は、まとめとしてオアシスのギャラガー兄弟の今年発表されたソロ作品を比較してみようと思います。
ここにも各々について雑感を書きましたが、これはどちらも本当に良いアルバムで、両方買って聴き込んでいます。この2枚に限って言えば、昔同じバンドだったとは思えないほど方向性の異なるものになっていますね。

先に発売されたのはリアムの「As You Were?」でした。これはもうロックンロールど真ん中といっていいようなアルバムで、でっかい音のギターにドラム、ベースにボーカルがドーン!!と。ロックンロールが好きでこの兄弟を追いかけている身からすると、まさに「これだよ!」と言いたくなるような曲ばかりでした。アコースティックギターが主体の落ち着いた曲もあり、メロディの良さがやはり際立っているように思います。
そして何よりやはり、リアムの声ですね。オアシス初期に並ぶくらいの力強さと安定感が戻ってきており、それでいてベテランのロックボーカリスト特有の渋い枯れた声色も聴くことができ、流石としか言いようがないです。
またオアシス的な曲も多く、For What It’s Worthなどはライブでもオアシス時代を思わせるようなシンガロングが巻き起こっているようです。それだけオアシスファンからしても違和感なく受け入れられるアルバムだということでしょう。
曲作りに関しても、まず何より歌を軸にして、そこにベース、ドラム、ギターで肉付けをしていっているような印象です。その点もまたオアシスらしい所でもあります。

そして、曲の作り方という点で非常に対照的なのがノエル兄貴の「Who Built The Moon?」ということになるでしょう。
今回大きくアプローチを変えてきており、このアルバムでは歌もあくまで曲を彩る楽器のひとつ、オルガンやシンセと同じところに置いてる感じです。
これも過去記事で詳しく書きましたが、こちらは全体として4つ打ちダンスナンバーの踊れる曲が多いのが特色です。そこにシンセが入って宇宙的、神秘的といいますか、そういった音像になっています。一曲目のFort Knoxなどは本当に今までのノエル・ギャラガーとは一線を画すようです。
しかしながら曲は多幸感に満ちたナンバーが多く、明るく開放的な印象です。
それもあってか、間違いなく実験作であるのに聴きやすく、どんな気分でも聴けるようなアルバムだと思います。また歌が一歩引いた立場になったとはいえ織り込まれているメロディそのものはとても心地よいもので、そこはやっぱりノエルだなあというところでもあります。


はい。
ここからは以上を踏まえて、二作品を並べて考えてみましょう。

まず2つを聴き比べて、個人的に一番に感じるのは、曲の中での歌の立ち位置がすごく違うなという点です。リアムはとにかく歌を聴かせるぜ、という感じで、それに対してノエルはメロディと言葉は主役でなく、あくまで曲の世界観を型作る一要素にとどめているといいますか…。
この違いは、やはりリアムは元々根っからのボーカリストであり、ノエルはギタリストでソングライターだったという事から来ているのかなと思います。ほんとうに最初は歌わないミュージシャンだったノエルだからこそ、歌を一歩後ろに置くという選択ができたと。もしかしたらそういう面もあるのかも知れません。

また、歌詞に関しても今回かなり違いがはっきり出たように思います。
ノエルが宇宙、愛、生命といった大きなテーマで、また時に解釈が難しいような抽象的な表現を取るのに対して、リアムはあくまでシンプルに人間関係、「俺とお前」の話をテーマにしている印象です。For Worth It’s Worthで許しを求めたり、You Better Runで突き放したり、そういう人との関わりを歌っているようです。

聴く人に「俺はこうだ、そんでお前はどうなんだよ?」と直に訴えかけるのがリアムで、曲を通して視界をパッと広げたような壮大な世界を見せるのがノエルと。
ちょっと乱暴ですが、そういう言い方もできるかもしれません。
そのどちらもオアシスの曲に垣間見ることができるもので、なるほど2人が分かれて曲を作るとこうなるのかという感じです。


それで結局、「どっちが良かった??」という事なのですが・・・。

どっちも良かった!というのは前提として。

 

今作に限って言えば、両アルバムをどんな人達が買って聴くかと言えば、そりゃあオアシスファンなわけでして。
つまり歌があってギターがあって…という形が好きな人達なわけですよね。
その点から言っても、得意分野、自分の土俵で勝負しているリアムと、異種格闘戦に挑戦したノエルでは、そりゃあリアムの方が受け入れられやすいとは思います。
だからセールスで見るとAs You Wereの方が優勢なのは、ある意味当然でもある。の、でしょう。
ノエル自身もこの「Who Built The Moon?」に関しては賞賛と批判の両方が来るだろうと言っているくらいですので、本来勝負として考える事自体あまり意味がないでしょう。

というのは身も蓋もないでしょうか…。

個人的には、何となくちょっとモヤモヤしている時や酔っ払ってる時は「As You Were?」が凄くいいですね。
そんで、穏やかな気分の天気のいい昼下がりなんかには「Who Built The Moon?」がいいです。そういう感じですね。

どっち聴こうかな〜って悩み方はしない二択です。

また、ひとつ確かなこととして、両作ともにそれぞれ兄弟の今後に向けた大きな足掛かりになるであろうことは間違いないでしょう。

リアムは自分の力で最高のロックンロールができることを証明し、ノエルは既存の殻を破り新しい境地を切り拓いてみせた。
それだけでも、凄く価値のある作品です。

どちらもファーストアルバムのような新鮮さと将来性を持ったものだと思います。

来年ノエルは日本にくるようですし、リアムは新曲の製作に入るなんて話もありますし、ますます楽しみです。

 

 

今回はここまでです。
今年もお付き合いくださり、ありがとうございました。

また来年も、たまに覗いていただけると幸いです。良いお年を。